芳賀の魅力に〝はが〟立たない⁉

 あなたは「HAGAグルミネーションフェス」(以下フェス)というイベントを知っているだろうか。このフェスは、芳賀町で行われるグルメ、音楽、イルミネーションを複合的に楽しめる催しである。今回取材班は、フェスを主催している芳賀町商工会の主任・亀井弘史さんと課長・加藤剛さんに、このフェスでの取り組みや現在に至るまでの歩み、イベントに懸ける思いを聞いた。

フェスについて語る加藤さん

 【「HAGAグルミネーションフェス」取材班】

商工会とフェス

 商工会とは、その地区の商店や工場、事業者が集まって構成されている組織である。基本的な仕事は、商売における課題を解決するためにサポートを行う。特に芳賀町商工会では、45歳以下で構成された「青年部」が、地域活性化や地域経済の向上を目指している。芳賀町商工会は、取り組みの一環として、フェスを2013年から主催・運営している。

 今回は、昨年12月1日の日曜日、午前11時から午後5時半にかけて開かれ、芳賀町の飲食店のみならず、町外の有名なラーメン屋、カフェなど26店舗が軒を連ねた。さらに、シンガーソングライターやダンスチーム、地元出身のお笑い芸人などの有名人らも集い、ステージを温めた。


観客を沸かせる地元出身のお笑い芸人

 この他にもマーケットや雑貨販売、ワークショップも開かれ、子供から大人まで幅広い世代が楽しめるイベントとなった。午後4時50分には、モミの木に飾られた約5万球のイルミネーションが点灯され、会場を幻想的に彩った。その後今年が初の試みだという花火大会も同時に催された。

 

フェスに懸ける思い

フェスが始まった経緯について、「本物のモミの木についているイルミネーションを子どもたちに見せてあげたいというところから始まった」と加藤さんは語る。

 芳賀町役場の駐車場には現在では珍しく、モミの木が植えられ現存している。そしてフェスの立ち上げメンバーのひとりに楽器演奏の経験があったこともあり、フェスという形で開催したいという思いがあった。また、イベント発足時にB-1グランプリのようなB級グルメフェスが流行していたことも重なり、グルメと音楽とイルミネーションを掛け合わせる運びとなった。

 そして「グルメと光と音楽の饗宴(きょうえん)」というテーマのもと、13年に第1回HAGAグルミネーションフェスが開催された。 

 加藤さんは、「初めて催すイベントで、右も左もわからない状態からのスタートだった」と振り返る。フェスの立ち上げメンバーと実行委員長、事務局員で芳賀町内にある有名な飲食店を1店1店歩いて声をかけ、出店する店を集めた。この地道で根気のいる作業は、「当時はとても大変だった」と亀井さんは語る。

 これほどまでに、商工会のメンバーがフェスに懸ける並々ならぬ情熱を持っていたのには、ある理由があった。それは、「芳賀町をもっと盛り上げたい」という思いである。「町のにぎわいの創出」「地域の活性化」の2本柱のもと、商工会のメンバーは、フェスをまちおこしにつなげていきたいという熱い思いがあった。目立った観光資源もなく、人口流出に歯止めがかからないこの町を盛り上げる一助になればと、強い信念を持つメンバーが奔走し、フェス開催にこぎつけた。

 このフェスの目的は、来客者に1日限りの楽しみを提供することだけではない。フェスを通して、地域の飲食店やマーケットの魅力を知ってもらい、フェス後もその店に通ってもらう。このように各店舗のリピーターを増やし、商業面での地域活性化や地域住民との交流の機会を創出することも大きな狙いの一つだという。「多くの人が芳賀町の魅力に触れ、『またこのご飯を食べたい』『また芳賀町に来たい』と思ってもらえたらこれ以上の喜びはない」と亀井さんは笑った。


取材に答える亀井さん

発展の光に陰も

 長年多くの地域住民に愛され、今年で12回目の開催となったフェスだが、さまざまな課題も浮き彫りになってきた。例えば、来客用のトイレの数が不足し、トイレに長蛇の列ができるなど混雑が昨年問題になった。原因は、1万人を超える来客者に対して芳賀町役場のトイレのみで対応したことだった。そこで今年は対策として、臨時の仮設トイレを新たに設置する予定だと話していた。

 また、駐車場の問題も深刻化している。昨年8月、宇都宮駅と芳賀町をつなぐLRT(次世代型路面電車)が開通したのにも関わらず、イベント会場である芳賀町役場からLRTの最寄り駅である「芳賀町工業団地管理センター前」駅までは、約5キロと距離が離れているため、公共交通機関を乗り継いで行く必要がある。それに加えて来場者のうち親子連れの割合が高いこのイベントでは、公共交通機関よりも車を利用して訪れる人の方が多くなってくる。

 そのため、あらかじめ用意している駐車場の数では足りなくなってしまう。さらに来客数が年々増加傾向にあるなか、現在の会場自体が来客数に対して見合っていないのではないかという話も出ている。

 商工会は来年度以降の開催場所について、LRTやバスなど公共交通機関を有効活用でき、より多くの集客を見込め、手狭になってきた現在の会場に代われるような場所について検討を進めていることで、これらの問題解決を図っている。

 LRT1本で訪れることができるようになれば、アクセスや交通費の面で利便性が上昇し、客層に変化が生まれ新たな世代の集客が期待できるかもしれない。

グルメ×音楽×光の饗宴

 さまざまな人々の強い思いと期待が込めたフェス当日、取材班も訪れたが、大きな盛り上がりをみせていた。フェス会場内は家族連れを中心に老若男女が訪れ、活気に満ちあふれていた。

 飲食ブースではローストビーフ丼やオムライスといった本格的な食事から串焼き、フライドポテトなど屋台の定番ともいえる軽食、さらにはワッフルやクレープといったスイーツまで幅広いラインナップが勢ぞろいしていた。中には午後3時の時点ですでに売り切れている商品があるほどの人気を誇る店舗もあった。


会場内で販売されていたローストビーフ丼とチャーシュー丼

 会場内には食事がしやすいようにベンチやテーブル席が多く設置されていたが、それらは常に来場者で満席の状態だった。また飲食ブースに隣接していたマルシェでは、クリスマスらしい雰囲気をまとった雑貨や小物であふれていた。その中には体験型のブースもあり、実際に夢中になってストラップをつくっている小学生の姿も見られた。

 さらにステージでは、ムラタニンニクンさんとその相方で栃木県出身のベリー大坪さんからなるお笑いコンビである、ベリーズさんによるお笑いライブで会場は大いに盛り上がり、シンガーソングライターの青谷明日香さんによる透き通る歌声がイベントに華を添えた。

 フェスの終盤には、イルミネーションと花火が夜空を彩った。

 このようなにぎわいを見せるフェスだが、昨年問題視されたトイレの混雑に関しては、仮設トイレの設置により大幅に改善が見られ、待ち時間がほとんどなくスムーズにトイレを使用することが可能だった。このように浮き彫りになる課題にも着実に対処をし、よりフェスを楽しめるような細やかな工夫がなされていた。

 花火大会との相乗効果も相まって、昨年を大幅に上回る約2万人の観光客が訪れ、大盛況のうちに幕を下ろしたこのフェスが、芳賀町の地域活性化において多大な貢献をもたらしていることは間違いない。なにより、人々がこの1年に1回のお祭りにかけてきた思いを肌でひしひしと感じることができた。

 2025年のHAGAグルミネーションフェスのさらなる発展と躍進を期待したい。


会場を彩るイルミネーション

 取材班は、大森旬、岡本和夏、木村美空、佐々木逢和、佐々木健太、渡邊千春(いずれも宇都宮大学地域デザイン科学部「地域メディア演習」履修生)

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